編集部のおすすめ本

編集部が選んだおすすめ本を紹介するコーナーです。

仕事に役立つ本のほか、手を休めてホッとできる本も紹介していきます。


教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」
●著 者:内田 良
●出版社:光文社新書(2015年6月20日発行)
●定 価:780円+税
●ISBN :978-4-334-03863-2

本書は、教育社会学を専門とする著者(『養護教諭通信』の連載でもお世話になっています)が、科学的根拠に基づくアプローチで、教育に潜む闇の部分を浮き彫りにしたものです。膨大な学校事故のデータを一つ一つ分析し、これまで「教育」の名のもとに、直視されないまま見過ごされてきたリスクに焦点を当てて論じています。

各章では、運動会の巨大組体操、2分の1成人式、運動部活動での「熱血指導」、多くの学校で土日も休みなく行なわれる部活動を例に挙げ、その問題点を明らかにしています。読み進めていくうち、問題の根底には「教育=善きもの」という観念が横たわっており、学校も保護者も一般市民も、その観念に縛られてリスクを見落とし、防げるはずの事故を繰り返してきた状況が見えてきます。

第5章では、そうしたリスクを見据えた改善策を講じることで、3年間死亡事故ゼロを達成した柔道界の取り組みが紹介され、学校に潜む危険を解消するためのヒントが示されています。

どの章も、豊富なデータ提示や具体例に加え、誰にでも分かりやすい表現で、引き込まれるように読み進めることができます。子どもたちが自分の誕生を喜び、親に感謝する行事である2分の1成人式に「どんなリスクがあるの?」と疑問を抱いた人だけでなく、教育に携わる多くの先生方にご一読をお勧めします!

赤ちゃんと子どもの応急処置マニュアル
●著 者:横田裕行 監訳、植田育也/荒木 尚 翻訳主幹
●出版社:南江堂(2014年11月発行)
●定 価:2,700円+税
●ISBN :978-4-524-26652-4

本書は、英国赤十字社刊行のテキスト「First Aid for Babies and Children Fast」第5版の訳書で、思春期までの子どもたちへの応急処置について書かれています。

火事・電撃傷・溺水など「緊急時の対応」にはじまり、「意識障害」「呼吸困難」「傷と出血」「中毒」「外傷(頭と顔/脊椎と頸部/骨・関節・筋肉)」など、多岐にわたる項目の応急処置の手順が具体的に取り上げられ、広く参考になる一冊です。巻末には索引がついています。

全ページカラーで、写真が随所に挿入されており、緊急時の対応や手順が誰にでも分かるように構成されています。イギリスの応急処置マニュアルの訳書であるため、日本の実情と合わない内容については、訳注や解説がていねいに書き加えられています。

写真が多用され、図鑑のようにも見える本書は、子どもの興味を引く一冊になるかもしれません。先生の役に立つだけでなく、子どもも思わず手にとってしまう…そんな本書を保健室の本棚に並べてみませんか?

おっぱいをつくる!
乳がん転じて美乳になる方法
●著 者:田中 ひろみ
●出版社:マガジンハウス(2012年6月14日発行)
●定 価:1,200円+税
●ISBN :978-4-8387-2444-4

文筆家・イラストレーターである著者の、乳がん体験記です。

乳がんの検査、診断・告知から、治療法の選択、手術、そして乳房再建までの体験が、その時々に揺れる感情とともに、漫画をまじえて分かりやすく書かれています。元ナースという経歴から、病気や医師を冷静に見つめる視点もあり、がんという重いテーマでも、深刻になりすぎずに読み進めることができます。

検査や治療の過程で出てくる医学用語の解説や、乳がんに関するコラム、著者が参加した患者会などの情報も充実していて、参考になります。特に、著者が大いに悩んだ乳房再建の方法や予防的切除については、くわしく紹介されています。日本人女性の16人に1人が乳がんにかかると言われている時代、お勧めしたい一冊です。

著者の田中ひろみさんは、月刊誌『養護教諭通信』の「私のプチ失敗談から」のコーナーにイラストを描いてくださっていますので、そちらもぜひご覧ください(^_-)

子どもらしさを大切にする保育
子ども理解と指導・援助のポイント
●著 者:師岡 章
●出版社:新読書社(2015年4月発行)
●定 価:1,700円+税
●ISBN :978-4-7880-1189-2

男性保育者として約20年間勤めていた著者は、子どもをよりよく育てるためには、対応のノウハウだけを学ぶ以前に、子どもをどう理解するのかという点を学ばなくてはならないと指摘しています。

そこで、本書では、園で見られる子どもの何気ない行為を「基本的生活にかかわる行為」「感情の表出にかかわる行為」「動的な行為」「表現行為」の4つに分けて、それぞれの行為が持つ意味に沿った保育者の指導と援助のポイントを解説しています。

子どもの姿を肯定的に理解するためにはどうしたらよいのかが分かる一冊です。

世の中が見えてくる統計学
●著 者:川又俊則
●出版社:幻冬舎(幻冬舎エデュケーション新書/2015月2月)
●定 価:780円+税
●ISBN :978-4-344-97955-0

本書は、「はじめに」にあるように、「ものの見方を変える」力を養うことができる本です。何気ない思い込みや、結果(数値)の一部だけを強調されることによって、私たちは物事を正確に捉えきれていないことを教えてくれます。

著者は、養護教諭養成課程で教えていることもあり、学校保健や児童問題に関するトピックスも多くとりあげられていて、統計の話とはいえ、養護教諭のみなさんにはとても読みやすい内容になっています。
また、読者の理解を確認しながら話を進めていく文体に、まるで講義を聞いているかのような気分になります。

これからは、発表される調査の結果をそのまま鵜呑みにするのではなく、調査の背景を見据えながら理解できるようになるはずです。読んで損のない一冊です!

東日本大震災から早くも4年が経ちました。そこで、東日本大震災をテーマとした本を2冊紹介します。

@養護教諭が語る東日本大震災
何を体験し、何を為し、何を果たしたか
●著 者:藤田和也
●出版社:農文協(2015年2月発行)
●定 価:2,000円+税
●ISBN :978-4-540-14251-2
A子どもの命と向き合う学校防災
東日本大震災の教訓から日本の沿岸部学校への提言
●著 者:数見隆生
●出版社:かもがわ出版(2015年4月発行)
●定 価:2,000円+税
●ISBN :978-4-7803-0757-3

@養護教諭が語る東日本大震災

東日本大震災後、約3年間にわたって被災地の学校を訪問し、被災時の体験とその後の活動について聴き取り調査を続けてきた筆者が、岩手・宮城・福島の養護教諭のべ50名余りへのインタビュー記録をもとにまとめた証言集です。

どのページを読んでも被災時の学校や子どもたちの様子が心に迫り、養護教諭の果たす役割の重要さが改めて浮かび上がってきます。

付録のCDには、聴き取り調査の全記録が収録されています。

A子どもの命と向き合う学校防災

長年、教員養成に携わりながらも、子どもの命にかかわる惨事が起こり得るということなどに、ほとんど意識がなかったという著者。東日本大震災を機に、学校防災の世界に足を踏み入れ、宮城と岩手の被災地域を視察・取材し、知り得た事実を一冊の書籍(『子どもの命はまもられたのか』)にまとめたのは2011年のことでした。

それから3年がたち、知り得たことをさらに発信していくことが自らの務めであるとし、本書『子どもの命と向き合う学校防災』を出版しました。

この本では、まず、次の3点が示されます。

1.東日本大震災の問題と課題から提起できる教訓

2.近い将来、大地震や大津波がやってくると言われる東南海地域沿岸部の、学校の備えに関する問題と課題

3.南房総市をモデルとした防災教育の実践的研究の成果と課題

 そして、これらを踏まえて「これからの学校防災への展望」が述べられています。

 最後に著者は、教育という仕事、教師という任務には子どもの命と向き合う姿勢が求められ、それが東日本大震災の残した大きな心の教訓であると結んでいます。子どもの命を守るために教師や学校にできることが提示された一冊です。

女子読みのススメ
●著 者:貴戸理恵
●出版社:岩波書店(岩波ジュニア新書・754)(2014年12月発行)
●定 価:780円+税
●ISBN :978-4-00-500754-7

イマドキの女の子の気持ちを知るには、この本がオススメです。

この本は、「学校」「恋愛」「家族」「大人になること」をテーマとする小説を通じて、現代の10代の女の子像を、私たちに教えてくれます。本書の著者は、不登校の経験があり、現在は子どもや若者の生きづらさについて研究しています。

小説から見えた女の子像は、みなさんが「女の子」だったころと同じだったでしょうか。また、学校で会う「女の子」と似ているでしょうか。それぞれの答えは、読んだ人によって異なると思います。

ただ、一つ言えるのは、子ども本人の考え方や思いに直接触れることは難しいけれど、こうした小説を読むことで、女の子ならではの生きづらさや問題について推し量ることができるということです。

巻末には、本書に取り上げられている作品や関連する作品のブックリストが掲載されています。保健室に来た「女の子」に勧めてみるのもいいかもしれません。

おまえ誰やねん!からでもモッていけるライブMCの教科書
●著 者:クマガイタツロウ(ワタナベフラワー)
●出版社:アルファノート(2014年12月発行)
●定 価:1,700円+税
●ISBN :978-4-906954-33-9

「人前で話すのが苦手です」と悩む人には、この「教科書」をおすすめします。

著者は、ワタナベフラワーというバンドのボーカルです。関西圏では朝の情報番組のレポーターとしても活動しているので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

この本は、タイトルの通り、音楽ライブを盛り上げるための話し方(MC)について書かれたもので、養護教諭のためのものではありません。

しかし、バンドマンが行なうMCの本質(=不特定多数の前で話すこと)は、養護教諭が保健指導や会議などの場で話すことと同じであり、実践する人がバンドマンであろうと、養護教諭であろうと関係ありません。ですから「ライブ」を保健指導・学校・会議などに、「お客さん」を子どもたち・先生・保護者などに置き換えて読むことができるでしょう。

「教科書」とありますが、カタイ内容ではありません。「お客さんが前に出てきてくれない」「すぐ噛んでしまう。早口になってしまう」などといった人前で話す場面で生じやすい問題を、自身の経験談を交えつつ、おもしろおかしく回答しています。

「どうしたらうまく話せるようになるんだろう」というシンプルながらも漠然とした問いに、しっかり応えてくれる本です。

このまま使える! 子どもの対人関係を育てるSSTマニュアル
不登校・ひきこもりへの実践にもとづくトレーニング
●著 者:大阪府立子どもライフサポートセンターほか編
●出版社:ミネルヴァ書房(2014年9月発行)
●定 価:2,400円+税
●ISBN :978-4-623-07141-8

本書は、大阪府立子どもライフサポートセンターで実施されているマニュアルを紹介したものです。児童福祉施設である大阪府立子どもライフサポートセンターは、開設当初から高校生や不登校児、ひきこもりの子どもたちを対象に活動を行なっており、社会的自立に向けたソーシャルスキルトレーニング(SST)の開発と取り組みには一定の評価を得ています。

最近、多くのSSTマニュアルが出版されていますが、本書が従来のものと違うのは、プログラムにアレンジや配慮すべきポイントが示されているところです。実際にプログラムを行なう場合、時間が十分確保できなかったり、参加者が多かったりして、参考にする本と同じ条件で行なうのが難しいことが少なくありません。本書は、こうした実施者側の状況を見越して、アレンジ可能な点や配慮すべき点が示されているので、プログラムを柔軟に行なうことができるようになっています。

プログラムは「あいさつをする」「人の話を聞く」といった小学校低学年レベルから、「面接試験を受ける」といった高校生レベルまで広く紹介されています。SSTマニュアルの入門書として最適の一冊です。

「はなそうよ!恋とエッチ」
みつけよう! からだときもち
●著 者:すぎむらなおみ+えすけん
●出版社:生活書院(2014年12月発行)
●定 価:2,000円+税
●ISBN :978-4-86500-033-7

「性」について、子どもたちにきちんと伝えたい、でも、うまく伝えられない、どんなふうに話せばよいのか分からないと悩む先生も多いのではないでしょうか。そこで、8人の養護教諭のグループがまとめた本書がおすすめです。著者たちは「多くの人に読んでほしいから」と、本文に難しい表現や漢字を用いていないため、子どもたちにも読みやすい本になっています。

本書は2部構成になっており、第1部では、「外性器」「妊娠」「いろいろな性」などのテーマについて、執筆者たちオリジナルの図と解説が掲載されています。1つのテーマにつき見開きの2ページで説明されているので、簡潔で分かりやすく、あたたかみのある図とともに、子どもでも抵抗なく読み進めることができます。

第2部はインタビュー集で、性暴力被害者やセクシャルマイノリティ、支援組織関係者などが登場します。私たちのまわりにはいろいろな人たちがいることに気づかせてくれ、性とは何か、改めて考えるきっかけともなるでしょう。インタビューの中に出てくる専門用語には、分かりやすい解説が付いています。

保健室などに置いて、子どもたちと一緒に読みたい一冊です。

「子どものこころ」
児童心理学入門[新版]
●著 者:櫻井茂男ほか
●出版社:有斐閣(2014年12月発行)
●定 価:2,100+税
●ISBN :978-4-641-22011-9

今の子どもたちは、どのような環境にいて、どんなことを考えているのでしょうか? 今の子どもを理解するのに役立つのが本書『子どものこころ』です。大学などのテキストとして使用されることが想定されているこの本を、養護教諭の皆さんにおすすめする理由は、2つあります。

1つ目は、最新の理論とデータが記載されているにもかかわらず、どの章も分量・内容ともにコンパクトにまとめられており、手軽で読みやすいという点です。併せて掲載されているコラムは、保健指導などの話のヒントにもなるでしょう。

2つ目は、現場(実践)と理論とのつながりが分かりやすい構成になっている点です。各章は「いつもビリはいやだ」「友達と仲良くなりたい」といった、子どもたちの気持ちがそのままタイトルになっています。

普段からこうした子どもたちの気持ちに寄り添うことが多い養護教諭の皆さんであれば、目次を見ただけで、自分が学びたい理論が分かるはずです。章末には、より深く学ぶための書籍が紹介されています。

子どものこころを理論からもっと学びたいという方に、最適な一冊です。

「発達障害のある子のサポートブック」
保育・教育の現場から寄せられた学習困難・不適切行動へのすぐできる対応策 2800
●著 者:榊原洋一ほか
●出版社:学研教育出版(2014年11月発行)
●定 価:2,000円+税
●ISBN :978-4-05-406077-7

「PRIM(Pre-Referral Intervention Manual)」という、アメリカで刊行されている書籍をご存じでしょうか? 本書『発達障害のある子のサポートブック』によれば、『PRIM』とは、普通学級内で見られる子どもの不適切行動や学習困難を系統的に分類し、その対応策を簡潔に示した書籍で、アメリカではバイブル的存在だと言います。その有益性を感じ、日本版PRIMの作成に取り組んだ筆者らが完成させたのが本書です。

著者らは、子どもの状態を「すぐに怒り出したり、イライラしたり、動揺したりする」「自虐行動が見られる」というように、約100に類型化し、その対応策を2,800ほど示しています。

この本の画期的なところは、これら対応策は、現場で働く先生から、その有効性が確認されたものばかりという点です。また、対応策が複数提示されていることから、状況や子どもの特性に合わせて、より適切なものを選択することができるという点もあるでしょう。
提示されている対応策は、複雑なものではありません。簡潔かつ明瞭に示されており、教員経験年数に関係なく、すぐに実践できるものばかりです。
対応に困ったときにすぐ参考にできるよう、手元に置いておきたい一冊です。

「小・中学校の先生のための『健康教育』実践ガイドブック
●著 者:森 良一
●出版社:東洋館出版社(2014年1月発行)
●定 価:2,200円+税
●ISBN :978-4-491-02985-6

昨今、教育機関における健康教育の実践の重要性は広く認識されていますが、参考となる資料が少ないのが現状です。そこで「学校現場ですぐに役立つものを!」と、刊行されたのが本書です。

文部科学省の教科調査官である筆者がまとめた本書は、学校長や学級担任・教科担任に向けて書かれていますが、養護教諭の皆さんにも大変役立つ一冊になるでしょう。

本書は、全3章で構成されています。 第1章では、健康教育を行なう法的根拠について解説されています。法的根拠を正しく知っていることは、学校保健を担う養護教諭にとって、大変重要なことです。
第2章では、「教職員全員で取り組むためには?」「健康づくりを継続するコツは?」といった問いに対し、筆者からの回答が示されています。健康教育における養護教諭の役割についても言及されています。

第3章では、「健康な生活」「歯・口の健康づくり」「心身の発育・発達と性」「心の健康」など、テーマを8つ取り上げ、健康教育の事例を42例紹介しています。どれも保健指導のヒントになるものばかりです。 保健指導を行なうとき、参考にしてみてはいかがでしょうか。


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